本山参りで同室になって仲良くなった曽田さん(近所にたくさんいる曽田さんの一人)は同じ昭和22年生まれで小説好きだった。時代小説も好きだと言うので遠慮気味に私が書いた小説を読むかと聞いたら是非読みたいと言ってくれたので、夕方マルコの散歩がてら本を三冊(同行二人長屋物語)届けに行く。
田舎に帰って13年、読書が好きだと言った人は二人目。私の小説を上げるのも二人目である。
帰郷して本を話題にするような人とは出会うことがなかったので、私も自分から本を話題にすることもなく、小説を書いていたことや発表する当てもないのに書き続けていることを話すこともなかった。TVの仕事をしていたことは知っている人はいたので、問われればTVの話はしたがそれ以上のことは話しても興味を持たれないと思っていたので話すこともしなかったのである。田舎では「小説を書いています」とはちょっと恥ずかしくて言えないところもあった。
でも、こうして出会ってすぐ、「あんな小説こんな小説・・・」と話す人を目の前にしたら、たちまち十年来の友に会ったような気持ちになって、私もとても嬉しくなったのであった。今回の本山参りで一番の収穫はこの人と出会ったことかもしれない。
本を渡すと、曽田さん喜んでブドウを上げると言う。「この時期に、ぶどう?」と首を傾げながらついて行く。
曽田さんの亡父はブドウを作っていて、今もハウスが2棟残っている。曽田さんは他県で働き、そこに家も建てたので、退職後は行ったり来たりしていて、ぶどうも道楽で作っているのだそうだ。年に半分以上は出雲にいるようだ。
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こんな季節でもまだブドウが残っていると言う。
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左)食べればいいのにもったいない話だ。これは種ありで酸っぱかったがこれはこれでうまい。無農薬だからそのまま食べればいいと口に放り込む。
右)ハウスの中に干していた干し柿ももらう。明日、グループホームから母を連れて帰り、一緒に昼ご飯を食べるので、この干し柿を食べさせてやろうと思っている。
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これ、マスカット。もう変色していて、黒くしぼんでしまったものもある。この黒くしぼんだのが干しぶどう。ところが、この変色してしまったマスカットも干しぶどうも甘くて旨いのにびっくりする。干しぶどうはまだ完全に水分が抜けていないが、甘くてまだ水分の残っているやわらかい干しぶどうもおつなものである。いい体験をさせてもらった。こういうところが田舎暮らしのいいところかもしれない。
「来年、孫連れておいで」
孫が喜ぶ姿がもう目に浮かぶ私であった。