7月21日は『出雲演劇鑑賞会』に入って2回目の演劇鑑賞。俳優座の芝居を見るのは40年ぶりぐらいか。私の若い頃は『民芸』とか『俳優座』など有名な劇団は既成演劇として打破されるべきものという風潮があって、私たち反体制的若者は『天井桟敷』とか『赤テント』などの小劇場の芝居に熱狂していたものだ。私は寺山修司や唐十郎が肌に合わなくて、清水邦夫の芝居をよく見ていた。
今日の芝居の作者も演出家も役者も一人も名前を知らない。演劇鑑賞会に入っていなければ絶対に観ることなどない芝居であった。今どきはどんな芝居をやるのだろうと興味半分で余り期待もしないで観た。『雉はじめて鳴く』も地味な題名でイメージも浮かばない。だが、始まって2時間、地味な学園内のドラマを身じろぎもしないで最後まで観てしまった。主人公の高校生はモンスターペアレントの母と二人住まい。父は主人公と妻を捨て実母の介護をしているがどこに居るのかは分からない。母はアルコール中毒になり心を病んでいる。そんな主人公が心のよりどころにしているのは担任の女教師。その女教師も主人公が所属するサッカー部の教師と不倫。主人公に思いを寄せるサッカー部のマネージャーも絡み、主人公と女教師の噂だけが独り歩きする。(救われない主人公が女教師にハグをして貰う。その場面を目撃されて噂が広がり、周囲の皆が振り回される)。救われない不倫の女教師。救われないアル中の母。実母を介護する父も救われない。主人公も救われない。救われない人たちの救われないドラマがこれでもかと繰り広げられる。それが俗世界の中で繰り広げられるから主人公たちはますます救われなくなる。
こんな救われないドラマがどうなるのだろう、どう救われるのだろう。ただその一点に引き付けられて最後まで固唾を呑んで観てしまったである。結局、ラストは主人公を苦しめていたモンスターマザーの脳溢血の急死で話は終わるのだが、俗世界では解決しても主人公たちはもはや救われないところにまで追い詰められている。主人公はラストでハグを求めるが女教師はもうハグをすることができなかった。
そして、そこへ車椅子の老婦人を押す初老の男が登場する。(それまでもその車椅子は何回か登場する。それは主人公の行方不明の父と実母)。今度もそうかと思っていると、実は30年後の世界で。車椅子に乗っているのは元女教師67歳。押しているのは齢をとった元高校生。その日、30年ぶりに再会したことが分かる。女教師は30年待っていたと言い、彼女の方からハグを求める。応える昔の教え子。
いつかは救われるとしてもかくも時間がかかるものなのか。安易な解決はしないだろうと思って観ていたが、いつまでも余韻の残るドラマだった。観客も救われたのである。
『雉はじめて鳴く』の題名について。
雉が鳴くのは恐ろしいことが起きる前兆と言う意味があるらしい。一方では雉が「ケンケン」と鳴くのは互いに呼び合う恋の声でもある。主人公の名は「けん」。劇中、飛び出したり、行方不明になる主人公をみなが「けん、けん」と叫んで探し回る場面が何度もある。
考えられたいい題名なのである。
ラストは無人の舞台に車椅子が一つ。
妻の一周忌のちょうど一週間前にいい芝居を観せてもらった。
今日の芝居の作者も演出家も役者も一人も名前を知らない。演劇鑑賞会に入っていなければ絶対に観ることなどない芝居であった。今どきはどんな芝居をやるのだろうと興味半分で余り期待もしないで観た。『雉はじめて鳴く』も地味な題名でイメージも浮かばない。だが、始まって2時間、地味な学園内のドラマを身じろぎもしないで最後まで観てしまった。主人公の高校生はモンスターペアレントの母と二人住まい。父は主人公と妻を捨て実母の介護をしているがどこに居るのかは分からない。母はアルコール中毒になり心を病んでいる。そんな主人公が心のよりどころにしているのは担任の女教師。その女教師も主人公が所属するサッカー部の教師と不倫。主人公に思いを寄せるサッカー部のマネージャーも絡み、主人公と女教師の噂だけが独り歩きする。(救われない主人公が女教師にハグをして貰う。その場面を目撃されて噂が広がり、周囲の皆が振り回される)。救われない不倫の女教師。救われないアル中の母。実母を介護する父も救われない。主人公も救われない。救われない人たちの救われないドラマがこれでもかと繰り広げられる。それが俗世界の中で繰り広げられるから主人公たちはますます救われなくなる。
こんな救われないドラマがどうなるのだろう、どう救われるのだろう。ただその一点に引き付けられて最後まで固唾を呑んで観てしまったである。結局、ラストは主人公を苦しめていたモンスターマザーの脳溢血の急死で話は終わるのだが、俗世界では解決しても主人公たちはもはや救われないところにまで追い詰められている。主人公はラストでハグを求めるが女教師はもうハグをすることができなかった。
そして、そこへ車椅子の老婦人を押す初老の男が登場する。(それまでもその車椅子は何回か登場する。それは主人公の行方不明の父と実母)。今度もそうかと思っていると、実は30年後の世界で。車椅子に乗っているのは元女教師67歳。押しているのは齢をとった元高校生。その日、30年ぶりに再会したことが分かる。女教師は30年待っていたと言い、彼女の方からハグを求める。応える昔の教え子。
いつかは救われるとしてもかくも時間がかかるものなのか。安易な解決はしないだろうと思って観ていたが、いつまでも余韻の残るドラマだった。観客も救われたのである。
『雉はじめて鳴く』の題名について。
雉が鳴くのは恐ろしいことが起きる前兆と言う意味があるらしい。一方では雉が「ケンケン」と鳴くのは互いに呼び合う恋の声でもある。主人公の名は「けん」。劇中、飛び出したり、行方不明になる主人公をみなが「けん、けん」と叫んで探し回る場面が何度もある。
考えられたいい題名なのである。
ラストは無人の舞台に車椅子が一つ。
妻の一周忌のちょうど一週間前にいい芝居を観せてもらった。
コメント
コメント一覧 (1)
そんな世界に、いる自分を、最近
感じています。
sotahirohisa
が
しました