第五章 出雲の武士(3)
辰敬は奥の一間に閉じ込められた。蟄居は重い。前回の謹慎とは比較にならない。謹慎は外出や来客が許されないだけで家族や使用人とは会えるが、蟄居は部屋から一歩も出ることが出来ない。食事は運ばれて来る。入浴も出来ない。髷を結うことも髭を剃ることも出来ない。用を足す時は壁の戸を開ければそこが厠であった。
初めは日がな一日壁に向かって座り、反省の姿勢を見せていたが数日も持たなかった。ただ座り続けているのは痺れに耐え、苦痛に耐え、時間に耐えることでしかなかった。これほど時が経つのが遅いとは。追い打ちを掛けるように寒さがぶり返し、辰敬は火の気も許されない部屋で歯の根も合わぬほど震えていた。
ようやく障子に初夏の陽が揺れ汗ばむ季節になったが蟄居が解ける気配は微塵もなかった。
父が戻って来て「御奉公がますます遠のいた」と正国と嘆き合ったと言う噂が伝わって来た。
辰敬は憤慨していた。こんなことを続けて一体何になるのか。反省しろだと。自分は間違ったことをしたつもりはなかった。何を反省するのだ。辰敬は今のこの苦痛から抜け出したいだけであった。そんなある日、大量の書物が運び込まれた。国久に嫁いだ姉が届けてくれたものであった。悶々と時間を持て余し、無為な時間を過ごしている辰敬を案じ、父と兄を説得してくれたのである。
辰敬は書物に埋没した。本を読んでいる時だけ苦痛を忘れ時間が経つのを忘れることが出来た。
じめじめした梅雨が過ぎ、炎暑の夏となった。風通しの悪い部屋は蒸し風呂となったが、蟄居の身で裸になる訳には行かない。汗に蒸れた身体は脇と言わず、腹、首、股間、所嫌わず痒くなり、掻きむしっているうちに化膿し、ますます痒くなった。痒いから掻く、掻くから痒くなるの悪循環で、辰敬は全身膿と瘡蓋に覆われてしまった。痒みと痛みに耐えかね、辰敬は狭く暑い部屋の中をのたうち回った。薬湯を服し全身に薬を塗りたくったが効果はなかった。もう読書どころではなかった。
そんな地獄の夏も終わろうとした頃、思いもかけない客がひっそりと忍ぶように現れた。おまんであった。丁度、杵築から戻っていた悉皆入道は何事かと緊張を隠せぬ顔でおまんと向かい合った。おまんは不意の訪問を詫びると、
「大方様の使いで守護所へ出向きました。その帰りに大方様より悉皆入道様にご挨拶申し上げるように仰せつかったのでござりまする」
御寮人が御屋形様と共に下向して四年になるが、御寮人からの使いが来るのは初めてであった。むろんおまんとも初対面である。
「大方様は辰敬殿が蟄居を命じられたとお聞きになりとても気の毒がっておられます。そろそろ許してやっては頂けぬかとのお願いを言付かってござりまする」
ぴかぴかに頭を剃り上げ、太い髭を八の字に撥ね上げた顔に困惑が浮かんだ。予想外の言葉だった。即座に返事が出来なかった。此度の蟄居は周囲の目を慮ってのことである。今日、おまんが来たことはとっくに知れている。そこですぐに許したとなったらいやでも痛くもない腹を探られることになる。
「折をみてよしなにお願いしたいとの仰せでございます」
深々と頭を下げると、
「長居は無用ですからお暇いたしますが、その前に一つだけ格別の計らいをお願いしたいのでございます」
おまんはひたと入道の目を見つめた。
「一目辰敬殿にお目にかかりとうございます。世を捨てた婆に免じてどうか御慈悲を」
おまんは声を震わせた。年増の古狸にすがりつくように迫られて、さしもの入道もたじたじとなった。
「まあ、某もそろそろ許そうかと思っていたところなので、お会いになってもよろしいかと思いますが、くれぐれもご内聞に」
しぶしぶそう言わざるを得なかった。
「有難うございます」
白粉の剥げ落ちた顔に満面の笑みが浮かんだ。
おまんはいそいそとまるで小娘のように廊下を渡った。
「辰敬殿、失礼します」
障子を開けた途端、おまんはうっと呻いて思わず袖で口元を覆った。未だかって体験した事のない強烈な悪臭の不意打ちに遭ったのである。汗と垢と膿の入り混じった何とも形容しがたい臭いがむっとする暑い部屋の中に充満していた。若い男が百日近くも閉じ込められていた真夏の部屋はもし臭い地獄と言うものがあるならばこの部屋のことだった。
くらくらと眩暈がしておまんは柱に掴まった。暫くして臭いに慣れるとおまんは目の前にある襤褸の塊を見下ろした。途端におまんはぷっと噴き出した。襤褸の塊と見えたのは雑巾のような蓬髪を垂らした若者であった。悪臭を放つ髪の毛の間からぎろっと覗いた目が不意の闖入者に驚愕していた。
その膿と瘡蓋だらけの顔をおまんは身を乗り出さんばかりに覗き込んだ。
「まあ、多胡の若様が台無しですねえ」
腹をよじって笑うと怪訝な顔の辰敬に大方様の使いで来た経緯を語った。
「蟄居はまもなく解けます。大方様のお陰ですよ」
辰敬はがばっとひれ伏した。涙が出そうだった。感激が言葉にならない。喜びで震える体から悪臭だけが湧き上がった。
辰敬は真っ先に吉童子丸の近況を尋ねた。
おまんがひたと辰敬を見据えた。
「辰敬殿に会いたいと仰せでした」
「ああ」
懐かしさが声になった。じんと五体が熱くなり化膿した傷が痛いぐらいに疼いた。あれから四年が経ったが、吉童子丸は辰敬を忘れてはいなかったのだ。
「蹴鞠がお好きだそうです」
守護所の庭で一人で鞠を弾ませているのであろうか。十三になった姿を想像しただけで胸が張り裂けそうだった。
「お付きの者の話ではとてもお上手になられたそうです」
辰敬は嬉しいよりも相手を出来ないことに涙が込み上げた。
おまんは目を背けると立ち上がった。
帰りに入道の部屋に寄ると、
「辰敬殿を湯治にやってくだされ」
と、頼み込んだ。
「大方様も同じことを仰せになるでしょう。辰敬殿はもう十分に罰を受けています」
入道は頷いた。
直ちに蟄居は解かれ辰敬は奥出雲の湯治場へ向かった。供はお目付け役の庄兵衛と身の回りの世話や煮炊きをする老僕の二人であった。
山峡の河原に湯が湧いているだけの寂しい湯治場で、辰敬たちは小さな山家を借りた。外に小さな竈がある。洗い物は小川ですます。こうした湯治客の便を図る山家が他にも数軒点在していた。
中国山地の奥はすでに秋の気配を示していた。辰敬は熱い湯に頭まで沈んだ。頭皮まで化膿していたので、髪は削ぎ切りに落として短くしていた。頭の先から爪先まで熱い湯が浸み込む。初めは痛みに呻いたが、身体を清潔に保ち、薬を塗り、薬湯を飲み続けていたら、傷に染み込む熱い湯も心地よいものに変わって行った。
湯治客は近郷の刈り入れが終わった百姓たちが多く、混浴だったが若い女はいなかった。気味悪がって敬を敬遠していた湯治客も、この頃には辰敬の裸を見ても気にしなくなっていた。百姓たちは長逗留はしないので、いつの間にか辰敬たちは湯治場の主になっていた。
気がついたら紅葉の坩堝の底で湯煙が湧き上がっていた。瘡蓋の跡はあばたとなって残ったがほぼ回復した。だが誰も帰ろうとは言い出さなかった。辰敬が帰りたくないのは無理もないが、庄兵衛は湯治場暮らしの安気の虜になってしまったのだ。そういう歳になっていた。一行は帰りを一寸延ばしに延ばしていた。
庄兵衛は昼間の長湯が堪えてお目付け役どころではなく早々と寝るのが習慣になっていた。ふと目が開いた。真っ暗闇に庄兵衛たちの寝息がしている。何刻だろう。遠く鹿の啼く声が聞こえて来る。辰敬はそっと身を起こした。湯につかりたくなったのである。これまでも真夜中に湯に行くことは何度もあった。
音を立てぬように山家を出た。
雲が垂れ込め外も真っ暗だったが、辰敬の足は月がなくても歩けるほど河原までの道を覚えていた。
ひんやりと暗い河原に降り黒い岩影に向かった。この岩を回った所に湯が湧いている。待ちきれぬ辰敬はいつものように帯を解きながら岩を回ると、浴衣を脱ごうとしてぎょっと立ち止まった。目の前に黒い人影があったのである。影も辰敬の陰に驚いたように立ちすくんだ。
薄い月明かりが刷毛で撫でるように闇を掃いた。白いものがふわりと浮かび甘い香りが匂い立った。女体だった。はらりと浴衣が落ちた時に雲間が割れたのだ。
「あっ」
と、若い娘の声が上がった。悲鳴の底にはまだ大人になり切っていない動転があった。胸の膨らみまでも竦んでいた。目は驚愕に見開かれたままであったがその器量は覚えていなかった。それくらい全裸の衝撃が大きかったのである。
月光が残酷なまでに冴え渡った。雲間が一気に裂けたのだ。白磁の人形に見えた裸身が生身の娘のものとなった。黒い茂みがくっきりと浮かんだ。
娘は悲鳴を上げると身を翻し足から湯に飛び込んだ。可愛いお尻が吸い込まれるように沈んだ。
辰敬も狼狽えていた。
「すまぬ」
浴衣の前を掻き合わせると帯を回しながら逃げ出した。
山家に戻っても、割れ鐘のような動悸は治まらなかった。庄兵衛と老僕のいびきの合唱が忌々しい。動悸は朝まで治まらなかった。
娘の素性は翌日すぐに分かった。
辰敬が湯につかっていると品の良い老婆が現れ湯の中で挨拶することになってしまった。
老婆は玉木と言う富田衆の女隠居で、孫娘と女中たちを伴い昨日の午後到着したと言う。辰敬たちと同じように山家を借りていた。昨日は疲れたので今日から湯治をすると言った。
辰敬が湯の中から目を巡らすと遠くにちらりと娘の姿が見えた。昨夜の娘だ。娘はすぐに身を隠してしまった。それから三日ほど娘の姿を見ることはなかった。
三日目の午後、三郎助が現れた。辰敬の回復具合を直接確かめに来たのである。これ以上の引き延ばしは無理だった。翌朝早々、辰敬たちは山家を引き払った。
庄兵衛と辰敬は同じ富田衆の誼で老婆に挨拶に行ったが孫娘は現れなかった。
帰宅したものの辰敬の頭はまだ散切りが伸び切らなかったので暫くは表に出ることは出来なかった。
こうして辰敬は浮世離れした秋を送ったのであるが、この間、出雲と中国山地を間に接する備後国では戦が勃発していた。仕掛けたのは尼子経久である。尼子の支援を受けた備後北部の大場山城主古志氏が備後の豊かな平野への進出を計ったのである。経久がこのような思い切った行動に出たのは、その頃、中国地方の国人領主たちの間に大内氏への不満が高まっていたからであった。その不満の理由は一に大内義興が長期に亘って都に滞在していたことにあった。永正五年、義興は足利義尹を奉じて上洛し、新政権を樹立した後も都にとどまり続け、永正八年には船岡山合戦で反義尹派を一掃した。義興は上洛する時、安芸や石見、備後などから多数の国人領主たちを動員していた。彼ら国人領主たちは滞在が長引いた上に戦に駆り出され不満を抱くようになったのである。中には無断で帰国する者達も出ていた。機を見るに敏な尼子経久はこの動揺に付け入り備後進出の足掛かりを作ろうとしたのだ。
義興は直ちに備後の国人領主を差し向けたが、思わしくない戦況に業を煮やし安芸吉田の国人領主毛利興元に出陣を命じた。
毛利興元も一足先に無断帰国した口だが若くして優れ者だった。この年の春、安芸の有力国人領主を集め国人一揆の契約を結んでいた。これは大内氏に敵対するものではないが、将軍や他家からの不当な命令や要求に対し一致協力して当たり、助け合おうと言う弱者の同盟であった。
興元にとっては安芸国人一揆の真価を問われる戦いだった。毛利勢は国人一揆の支援を得て戦意は高かった。安芸の山奥から南下すると一気に大場山城を落とした。毛利の声価だけが高まった戦いだった。毛利侮らざるべし。それ以前から小さな国人領主だが出雲でも毛利を評価している者はいた。毛利は出雲にとって意識せざるを得ない存在になったと言えよう。辰敬にもその戦いの噂は聞こえて来たが、遠い世界の出来事のように思えていた。
辰敬が外出できるようになったのは、年を越し永正十年になってからであった。その頃には髪も伸び髷を結えるようになり、あばたも薄くなり気にならなくなった。
表へ出られるようになっても馬を責める以外に辰敬が行けるのは小屋爺の処だけであった。
雪も降らず何日も穏やかな日が続いた。
辰敬は久しぶりに小屋を訪ねた。
「爺、おるか」
入り口の筵を上げて頭を突っ込んだ辰敬は、
「えっ」
と、思わず声を上げ、振り返った娘が、
「まあっ」
と、驚いたのは同時で、
「な、なんじゃあ」
と、続けざまに小屋爺が素っ頓狂な声を上げた。
みるみる頬を染めて俯いた娘に釣られて辰敬も茹蛸のように赤くなった。富田の事情通で地獄耳の老人がこの光景を呆気にとられたように見つめていた。
「おぬし達は知り合いなのか……多胡様のお坊ちゃんと、玉木様のお嬢様がお知り合いとは……」
目を白黒させ、
「これはたまげた。いつ、どこでお知り合いになられたのじゃ」
この爺さんがこんなに驚くのも珍しい。
娘は俯き耳たぶまで赤くした。
祖母の付き添いで湯治場に来た娘と会ったと言ったら、小屋爺がどんな想像を膨らませるか辰敬には想像がついた。
「紅葉狩りで玉木様の御一行と一緒になり、ご挨拶したことがあったのじゃ」
「ああ、わぬしが湯治に行ったと聞いちょったが……その時の事か……」
辰敬はどきっとした。この爺さんはそんな事まで知っているのか。
「ははん、そうか。紅葉狩りとは、さてはお湯に浸かって眺めたということか」
「ば、馬鹿な。何を言う、小屋爺」
辰敬は狼狽えた。当たらずとも遠からず。言わせて置いたらにやにや笑う爺さんはこの上何を言い出すか分からない。娘は今にも消え入りそうな風情であった。
辰敬は話題を変えた。
「玉木様のお嬢様がなぜこんな所へ」
「こんな所で悪かったのう。こう見えても御城下ではちっとは知られておるんじゃ」
「薬草に詳しいと聞いて参ったのです」
娘が向き直った。
小屋爺は皺だらけの小鼻を膨らませた。
「湯治へ行きましたが、お婆様の具合が良くならなかったのです。医師の薬も効きません。藁にもすがるつもりで来たのです」
「一人でか」
娘はこくりと頷いた。
「婆様思いのお嬢様じゃ。今手元にある薬草を差し上げたところじゃ。辰敬殿、途中まで送ってあげなされ」
にやりと片目を瞑った。
辰敬はぷいと目を逸らし小屋を出た。
娘も後を追って出て来た。
小屋爺が声を掛けた。
「辰敬殿、荷物を持って上げなされ」
ぎくっと辰敬は立ち止まった。振り返ると娘は薬草の入った小さな袋を抱いていた。重くもなくかさばるものでもないのにと思ったが、無言で手を伸ばすと娘は頭を下げて袋を渡した。
小屋爺はさらに追い打ちをかけた。
「足元が悪いけん、手を取って上げなされよ」
「わかっちょる」
辰敬は憤然と歩き出した。手も取らずに。娘は慌てて追った。
(ひひひ……)
小屋爺は笑いを噛み殺した。
辰敬は谷川沿いにずんずん歩いた。
娘は黙ってついて来る。
(あっ)
不意に娘が悲鳴を上げた。
はっと振り返った辰敬の目の前に姿勢を崩した娘が倒れ掛かって来た。辰敬は思わず抱き留めた。勢いのついた身体は思いのほか重く、力を込めて受け止めなければならなかった。娘の身体は柔らかく温かかった。噴き上げるような若い匂いが寒気を忘れさせたが抱き合っていたのは一瞬だった。
「すみません」
娘がまた頬を染めて離れた。
「悪いのは俺じゃ。年寄りの忠告はきかんといけんかった」
苦笑いに誤魔化して、辰敬は手を差し伸べた。娘ははっと辰敬の手と顔を見比べたが、おずおずと手を伸ばして掴んだ。
二人は手をつないで歩き出した。
ずっと無言だった。
日当たりの悪い谷川は雪が固まり氷も張っていた。足を滑らせるたびに娘はぎゅっと辰敬の手を握り締めた。辰敬の手がしびれるほどの力だった。
ようやく陽当たりのいい場所に出た。谷が開け、足場も良くなった。
娘が手を離した。
「有難うございます。もう大丈夫です」
向き直った辰敬はまだこの娘の名を知らないことに気がついた。
「そなたの名を聞いちょらんじゃった」
「きいと申します」
胸の内で(きい)と呟き娘の顔を見返した。この何年もの間、辰敬は年頃の娘を見るたびにいちと比べている自分に気がついていた。結論はいつも決まっていた。いちをしのぐ娘は一人もいなかった。
辰敬はきいを見つめた。やはりいちには及ばない。いちはこの世の奇跡だった。いちより深く黒い瞳はなく、いちより柔らかく上品な唇はなく、抜けるように白い顔はなく、秀でた額、優美な眉、ちょとだけ驕慢な鼻、艶やかな黒髪の持ち主はいなかった。運慶快慶でも彫れぬ美の極致であった。いちが都の牡丹ならきいは富田の野菊に過ぎない。
だが目は引き寄せられる。なぜだろう。月明かりに浮かんだきいの裸身が蘇った。一糸まとわぬ姿を見てしまったからだろうか。邪な考えを振り払うように目を逸らし辰敬は歩き出した。娘は黙って付いて来る。沈黙が気まずくて、
「お婆様はどこが悪いのじゃ」
「気鬱です。動悸や眩暈がして、吐き気がすることもあり、胃の腑にいつも水が溜まっているような気がするそうです」
「小屋爺の薬は効くはずじゃ」
「そう願っております」
また話は途切れた。この先うまく話を繋げば随分気持ちが楽になるであろうに何を話してよいか分からなかった。心ではこのままでは離れてしまうことになると思っているのにとうとう富田八幡宮の裏の森に来てしまった。ここから先は一緒に歩くことは出来ない。辰敬は薬草の袋を渡した。きいは礼を言うと名残惜しそうに、辰敬にはそう見えたのだが立ち去った。
きいの姿が消え、しばらくしてから辰敬は富田川の上流に向かって大きく迂回し帰宅した。























