
五章をようやく発売に漕ぎつけました。連載したところですが連載はここまでで次章から書下ろしになります。六章に続く重要な章になりますので手直しに時間がかかり遅くなったしだいです。最終十章はようやく目途が立ったところで連休前には書き上げようと頑張っているところです。
五章あらすじ
帰国したが辰敬を見る目は冷たくいつまでたっても出仕できず、守護所に独り暮らす吉童子丸に会うことも禁じられていた。そんな孤独な辰敬の味方は再会した小屋爺一人だけであった。ある日、吉童子丸が大方様の見舞いに行ったと知った辰敬は矢も楯もたまらず大方様を訪ねたが面会は果たせず、怒った父から蟄居を命じられた。
辰敬は真夏の蟄居で皮膚病に苦しむが、大方様の嘆願で許されて湯治に行くことが出来た。
そこで辰敬は深夜に湯浴みする娘と鉢合わせする。祖母の湯治に付き添って来た富田衆玉木家の娘きいであった。いちを忘れられず悶々とする辰敬の胸に滑り込むきい。その美しさにおいてはいちには及ばないが辰敬の鬱屈した心を癒やしてくれる娘だった。だが阿用城城主桜井宗的の反乱が二人のはかない恋を引き裂く。思いを打ち明ける間もなく辰敬は戦いに駆り出される。
その戦場でまたもや失策を冒した辰敬は安来の港の蔵番に落とされる。そこは人生の落伍者の掃きだめだった。お頭は経久に疎まれ左遷された男であった。追い打ちをかけるように縁談が決まったきいから別れの文が来る。
その後、富田に戻るも相変わらず出仕できない辰敬は京羅木山で行倒れた多聞を救う。多聞は桜井宗的の反乱を知り阿用城へ行こうとしていた。愛する女と東国へ向かったものの女を失った多聞は阿用城で尼子経久に一矢報いる覚悟でいた。それが御屋形様の恩に報いるただひとつの道だったのである。御屋形様への深い思いを初めて知る辰敬。辰敬は阿用城へ向かう多聞を見送る。次に会う時は阿用城であることを覚悟して。
果たして辰敬は瀕死の多聞と出会い介錯を頼まれる。泣いて首を取る辰敬。
その首は刑場に晒された。辰敬にとっては耐え難いことだった。辰敬はその首を盗んで御屋形様の側に葬ろうと思い立つ。だが辰敬より先に首を盗んだ者がいた。小屋爺だった。小屋爺は見張りに見つかり斬られるが、多聞の首を抱いたまま深夜の富田川に消えた。
辰敬の気持ちを察した小屋爺は辰敬のために首を盗み出そうとしてくれたのであった。無学な乞食同然な爺さんの無償の行いに涙する辰敬。
そこへ、安来の蔵番のお頭が切腹した報せが届く。部下の不始末を救うために温情を願い出たのを一蹴されたお頭は尼子経久に抗議して腹を切ったのである。辰敬はここにも真の武士がいたことを知る。多聞とお頭と武士よりも武士らしい小屋爺の死が辰敬を再び旅に駆り立てる。己が生き方を探して。
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