11月5日に特養へ御礼に行った。何も手につかずぼおっとしていたら病院沙汰が続きなかなか御礼に行けなかったのだがようやく葬儀以来初めてお世話になった方たちにお会いし、直接御礼を言うことが出来た。顔を見ただけで万感こみあげて来て涙もろい私は逃げるように特養を後にした。帰りの車の中でもう二度とお会いすることはないだろうなと思うと涙が込み上げて来て、お世話になりましたと心の中で呟いていた。
施設には妻の持ち物がまだたくさん残っていたので、それらも車に積んで引き上げた。主に衣類だが、歯磨き用具やコップ類、タオル類、スタッフの人がつけていた記録ノート、写真や母の日などに届けたプレゼントなど、どれもみな懐かしいものばかり。三年間、特養内に入れなかったから余計に懐かしく感じたのかもしれない。その中でも胸を締め付けられたのがギブスと靴。
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左足の装具と右足の靴。もうこの靴を履く足はないと思うと帰宅してぼろぼろと涙が落ちた。寝たきりになるまでは十数年間妻を支えた装具である。左半身がマヒしていたので、ベッドから車椅子に移る時には体を支えるために必要な装具だったのである。10年近く使ってぼろぼろになったので、出雲で新たに作ったものだ。右足は市販の介護用の靴。介護用の靴はよくしたもので片方だけを半額で売ってくれる。
持ち帰った物を眺めていると、ほとんどがもういらないものばかりであるが、どれも捨てることが出来ない。しみじみと思った。妻が生きている時は思い出だったものが、妻が死んでしまったら永遠の宝物になっていることに。
そんな宝物の一つが妻の言葉である。
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前回のブログで、小さな手帳に妻の言葉を書き留めていたが、2006年の正月から始めて2010年の5月7日で力尽きてやめてしまったと記した。しかし、完全にやめた訳ではなく、2010年の5月21日からは手近な紙にメモしたものを暇な時にパソコンにまとめた。前回は5月7日までをアップしたので、今日は残りの5月21日から11月までをアップします。

語録(37)

2010.5.21

箸でつまめない時

「遠近がきかなくなった。ひところお父さんが遠くに見えて死のうと思ったことあるの」

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「私が死んで脳の手術したら、お父さんの悪口いっぱい出て来る」

2010.5.22

「北極行くの」

「行ってどうすんの」

「どうすんのじゃないの。行くと楽しいの。家の中でじっとしてるより」

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「私ね、今季節の変わり目の、心の病なの。時間が分からなくなるの。寝てるのか、起きているのか」

2010.6.3

「パパちゃん、会いに行くの。パパちゃん、死人じゃないだろうな」

「何で?」

「パパちゃん、一度死んどらすから」

2010.6.4

俺の顔を見て

「病気してから年取ったね」

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「裏から来るかな。裏があるの知ってるかな」

「誰が」

「パパちゃん」

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夜、脚を揉んでやると

「ああ、気持ちいい。眠たくなっちゃった。お父さん、代ろう。揉んであげるよ。気持ちいいよ。眠くなるよ」

2010.6.6

夜、パット交換の時、目を覚まし

「寒くないか」

「うるさい、死ね」

2010.6.26

「悲しくなるような正月の料理だね」

2010.6.29

「モモちゃん、左手が痛いよう。どうにかしてくれ」

※身体の痛みを訴えられるのが一番つらい

2010.6.30

「お父さんが起きていると思うと寝言も言えない」

2010.7.4

足を揉んでやると

「気持ちいい。あ、やめないで。お父さんはすぐにやめようとするから」

2010.7.5

オムツを替えていると

「お父さん優しいねえ。自分でもそう思っているでしょう」

2010.7.24

「今日は一日いてくれてありがとう」

2010.7.27

昼、ゆうあい福祉公社の弁当を食べながら

「私、これ囚人の弁当と思って食べてるの」

「何で?」

「逃げ出そうとしてつかまったから」

2010.7.28

「いなくていいよ、あっち行け。いちいちいなくていいと言ったの」

2010.8.26

「久しぶりに会ったら声が変わったみたい」

2010.8.28

「本当にお父さんかなと思ってみてるの。こんなことしてるのめったにないから」

2010.8.31

「時々寝たふりして、お父さんに作ってもらおうかな」

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足を揉む。

「お正月だから甘えてよう」

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「お父さん、正月だと鼻が高いね」

2010.9.1

「正月にパパちゃん呼んでいい。見たいから。パパちゃんと呼んでみたいから。そしたらママちゃんも喜ぶよ」

2010.11.5

「このごろ死んだ夢ばかり見る」

「この頃よく死ぬ」

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本当にメモを取るのが限界に来ていたのだと思う。9月は1回。10月は0回で、11月は1回である。しかし、今読み返してみると抜群に面白いものばかりである。くたびれていても、これは残さないとと思って懸命に書き留めたのだと思う。この後、しばらく休むことになるが、次回からは再開したところから始めます。