忘れた頃にやって来る。昨夜、ばたばたと天井を駆けまわる音がした。ああ、また来たか。二、三日で消えてくれればいいのだが。今はすっかり慣れっこになったので我慢することを覚えたが、初めての時は撃退するのに悪戦苦闘した。
帰郷した年、いきなり天井で真夜中に運動会が始まったのである。はじめは鼠だと思ったが、鼠にしては重量感がある。この時は、一匹ではなさそうで、眠れない。
何日も夜も眠りにつく頃になると騒ぎ出す。頭に来て、棒で天井を突いて脅すのだが、ちっとも効かない。懐中電灯で屋根裏を照らしたり、ラジオを突っ込んでガンガン鳴らしても効果がない。
改築と増築を繰り返した家だから、屋根裏も壁だらけで、光も奥まで届かない。
結局、この時は3週間ぐらい居座り続けた。それがこれまでの最長記録である。
近所にも出没しているらしいが、誰も正体を知らない。
色々な見解があって、当時はイタチ説とムササビ説が有力だった。
私もイタチは縁側の下に駆け込んだのを目撃した。私と目が合うと、ぱっと柱に飛びついて、上に消えたから、縁側の隙間から家の中に入ったことは間違いない。壁裏を伝わって屋根裏に上がることは十分考えられる。
ムササビらしきものを目撃したのは私の妹である。
庭にいたら、屋根を走って来た生き物がぱっと家の横のモクレンに飛び移り、反転してまた屋根を走り、棟の間から屋根裏に潜り込んだと言う。白っぽくて、尻尾が長かったらしい。
その前に、ちょうどTVでムササビ退治の番組を見ていた。そのムササビも白っぽく見えたので、妹が目撃したのはどうやらムササビらしい。我が家は平地の真ん中だが、ムササビは高い木から滑空を繰り返して移動するから、現れても不思議ではない。
ところが、ここにもう一つ有力説が浮上した。
我が畑先生が、昨秋、
「ふろちゃん、わし、テンを見たぞ。畑をぴゅーっと駆けって行ったぞ」と言うのだ。
現段階では、可能性として、私はムササビ70%、テン20%、イタチ10%と予想している。いつか正体を突き止めたいものだ。
この近所にはまだキツネとタヌキも出没する。
タヌキは見たことはないが、近所の人は死にかけたタヌキがよろよろと歩いているのを見たと言っていた。親子連れを見た人もいる。
私はこれも帰郷してすぐのこと、縁の下にぼろ布が落ちていたので、潜り込んで引っ張り出したら、何とこれがキツネのミイラのぼろ布化したものであった。余りの気味悪さに、ぎゃっと叫んで放り投げた。
畑先生に言わせると、このキツネは近くのお寺に巣食っていたものが、我が家に移って住み着いていたものらしい。
2年前には小学校の近くにクマが出て大騒ぎになった。
さすがにクマは前代未聞。こんなところにクマが出たなんて初めてだったらしい。
こう書くと、どんな田舎かと思われるかもしれないが、これでも島根県では松江市に次ぐ二番目の市である。少し行けば工業団地があるし、車で5分も走れば賑やかな観光地出雲大社である。
屋根裏にさえ入って来なければいいのだ。
来てもいいけど、二、三日で出て行って欲しい。それ以上は困る。
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