その後、また別な村上春樹を愛する若者と知り合った。
「今、韓国の若者は困ったことになっているのです」
漢字を廃してしまったために、僅か数十年前の漢字混じりのハングルの本が読めなくなっていると言うのだ。そして、一番深刻なのは漢字を廃したために、語彙が貧しくなってしまったことだと嘆いた。言葉の豊かさを失うなんて想像するだに恐ろしい。同情を禁じ得なかった。さすがに行き過ぎと見直そうとする動きもあると言っていたが、その後どうなったのだろう。
もう一つの彼の悩みはこれも韓国ゆえのものだった。
彼の徴兵体験を聞いたのだが、それは私が映画や本で知っている旧日本軍と同じであった。非人間性、残酷さ、過酷さ。言語に絶するものがあった。彼はちょうど男の子が生まれたばかりだった。
「私はこの子に私が味わったような体験をさせたくないんです」
心優しい若者の目は潤んでいるように見えた。
三年前ぐらいにメールのやりとりをしたのが最後。彼の子は小学校の何年生になったのだろうか。