出版の手続きの最初にタイトルの登録をする。
まず題名を書きこむ。
「戦国を旅した男 石見岩山城主多胡辰敬 第九章 戦国家族」
次にカタカナ表記する。
「センゴクヲタビシタオトコ イワミイワヤマジョウシュタコトキタカ ダイキュウショウ センゴクカゾク」
最後にローマ字表記する。
「SENGOKUWOTABISHITAOTOKO IWAMIIWAYAMAJOUSYUTAKOTOKITAKA DAIKYUSYO SENGOKUKAZOKU」
その後、必要事項を記入し、あらすじを書きこんで次に原稿と表紙をアップするのだが、いくら次へ進もうとしてもエラーが出て先へ進めないのだ。
そのエラーというのが、タイトルのローマ字表記である。
どこか記入ミスがあったのかと思い、打ち直すが何度やってもエラーが出る。この部分は第1章から第8章まで、8回やって来た所で、いつも問題なく通過していた。間違えようにも間違える所ではないのだ。以前、一度だけエラーが出たのは、「し」が「SI」ではだめで「SHI」に直した所だけだった。どこかローマ字入力が間違っているのではないかと、色々ためしても駄目。半日やって投げ出す。
出だしでつまずいたのでダメージは大きい。ベッドに入ってあれこれ考えるもまるで思い当たらない。
翌朝もどんよりした気分でPCに向かうがやっぱり駄目。迷惑かけたくなかったが背に腹は代えられないので、後輩のライターに写メを撮って送る。
返事が来て、全角スペースがエラーと判断されることがあるので、半角スペースにしてみろと言う。
そこでスペース部分を半角にしたらそれでも駄目。正月早々どんよりと落ち込む。この出版を進めないとほかが進まなくなってしまう。他に相談できそうな人の顔を思い浮かべるも、正月早々だけに気楽には頼みにくい。赤ん坊が生まれたばかりの娘婿にもSOSを発する。
すると昨夜になって後輩から小文字で書きこんでみろ
「sengokuwotabisitaotoko iwamiiwayamajousyutakotokitaka 9 sengokukazoku」とアドバイスがある。
なるほどと行けそうな気がして小文字で試したら見事に先に進めた次第である。
Kindleの馬鹿野郎と罵るが仕方ないのだ。Kindleはアメリカだからローマ字で登録せざるをえないのである。
「あらすじ」
帰国した辰敬は父の位牌に手を合わせると、休む間もなく父尼子経久に叛いた三男塩冶興久の乱に駆り出された。大内毛利が共倒れを目論む父と子の戦いは出雲存亡の危機をはらみながら数年に及んだ。その激戦のさなか辰敬は将来の親戚となる尼子の武将湯惟宗(これむね)と出会う。湯は宍道湖畔の海辺領主である。南蛮交易に憧れる型破りの武士で諸国遍歴を重ねた辰敬とは肝胆相照らす仲となる。
辰敬は翌年見合いをして生涯の伴侶千代を得る。辰敬を心配した亡き父が辰敬の為に見初めた女であった。辰敬は38歳、千代は32歳で再婚だった。遅い結婚にもかかわらず辰敬は一男一女を得る。辰敬は妻と子を愛し、千代もまた夫と子を愛す戦国の家族の歴史が始まる。
その二人目の子阿茶の一頁は誕生の瞬間から破天荒なものになる。阿茶が生まれるや否や湯がすっ飛んで来て長男の嫁に欲しいと懇願したのである。湯は女の子の誕生を待ち望んでいたと言う。辰敬と貞女の誉れ高き千代の間に生まれた子なら湯家を支える嫁になると信じていた。
千代は結婚してすぐ夫が戦死するも再婚を断り、義父母に孝養を尽くす貞女として知られていた。湯の熱意にほだされて生まれたばかりの阿茶と湯の幼い長男との婚約が成立する。
興久の反乱は我が子を自害に追い込んだ経久の勝利に終わり、尼子家は経久から孫の尼子晴久の代に替わるが、出雲は大内毛利との中国の覇権を賭けた熾烈な戦いが続く。
結婚してから12年の間は戦いの日々の連続。かわいい盛りの二人の子と過ごす時間もなかった。
尼子晴久は無謀ともいえる毛利攻めを宣言し、辰敬は密命を命じられる。その出発前夜、辰敬が将棋の達人と知った7歳の子から将棋を教えてくれとせがまれる。帰国したら教えると約束する辰敬。
毛利攻めは大敗北に終わる。命からがら生きて帰ることが出来た辰敬は待っていた子と将棋を指すことが出来た。それはかけがえのない小さな幸せだった。
ラストの2章(9章と10章)を読んだだけでも辰敬と末裔につながる話が楽しめると思います。