いよいよ6月4日に母がグループホームへ入所することに決まったがコロナ禍のせいで当てにしていた妹たちの手伝いが頼めなくなり頭を抱えている。一人は福岡、一人は神奈川なのだが、福岡が警戒解除になったので、神奈川の妹は無理でも、福岡の妹は手伝いに来てくれると思い込んでいたのだ。ところがケアマネージャーが施設に福岡の妹が手伝いに来てもいいかどうか問合せした方がいいと言うので聞いてみたら、県外をまたいでの来県者(しかも福岡)と同居(濃厚接触)した人を施設に入れることは出来ないと言う。
まさか妹の手伝いがダメになるとは、予想だにしていなかったので一瞬茫然となる。衣類とか寝巻、下着などどこに何があるのか、どんなものを着させればいいのか何も分からない。これまでは手伝いに来てくれていた妹達に任せっきりだったから、いちいち電話してあっちのタンス、こっちの押し入れ、ベッドの引き出しなどから引っ張り出しているが、これから梅雨になるので完全に夏服のみという訳にも行かず、広げてみては「これは着れるのか」「暑くはないだろうか」逆に「薄すぎるのではないか」と思案投げ首状態である。化粧品も持たせないといけない。90過ぎているのにまだばっちり化粧するのだ。布団も用意しないといけない。カバーもつけないといけない。布団はどれを持たせるのか、布団カバーやシーツはどれを選べばいいのか。儂が電話ばかりして悲鳴を上げているものだからとうとう福岡妹は自分の家にある布団と布団カバーとシーツを送ってくれた。後は布団にカバーをつければよい。他にも上履きや靴下、その他持ち込みの品々などいろいろあるが、毎日、少しづつやって行こうと思っている。
問題は、これが一番大きな問題なのだが、母を納得させると言う仕事が残っている。そんなことは一番最初に片づけることだろうと言われるだろうが、認知症の母は施設の職員さんに会って話をして、福岡の妹に似て背が高いと気に入ったことや、施設を見学して「奇麗なお風呂だね」と言ったことなど、見事に忘れているのだ。
忘れていると言えば、延べ何十年も東京に住んでいたことも忘れていて唖然とさせられたばかりである。「えっ、私が東京にすんでいたの」とのたもうたのだ。
またいちからグループホームに入ることを納得(理解?)させないといけないので、先日、ちらっと話題にしたら「そんなところには行きたくない」と言う。
だからこそ妹の力を借りたかったのである。儂と妹の二人がかりで、月末には神奈川の妹も来てくれると思い込んでいたので、三人の子供で納得させようと思っていたのだ。肝心の説得を一人でしなければならない。これが一番辛い。頭が痛い。母が言うことはわかっている。「私は何でもできる」。何もできないのに。毎朝食べる食パンがどこにあるか分からず、そのパンをトースターに入れたら、すぐに忘れてまたパンを焼こうとする。ついつい声を荒げてしまうことばかり。しまった言い過ぎたと思うと、「叱られてばかりで死んだ方がいい」と言う。
こんな息子にはたして説得できるのか。正直自信はない。儂だって一生自宅で面倒を見てやれたらそれが一番いいと思ってはいる。一番いいのは、と言ういい方も変なのだが、認知症がもっと進み「あんた誰?」と言われたら儂もこんなに悩まないと思うのだ。しかし、そうなった時、すぐに入れる施設がないから、今すぐに入れて、家から車で5分の所に入って欲しいのである。
妹にこっそりと来て手伝って貰う姑息な手も考えたが、それは施設に対して嘘をつくことになる。母が「背が高い娘が手伝いに来た」とでも言ったらと思うととても出来ない。信頼関係を失うようなことは出来ないものなあ。
妻の特養も今回三度目の面会延期の通知が来た。厚生省からの指示があって介護施設の出入は変わらず厳しい制限があるようだ。
あと10日ほどで説得と準備は必ずしなければならない。