今日、20年ぶりに劇場で観劇した。場所は出雲市民会館。出雲演劇鑑賞会主催で栗原小巻一人芝居。
シャンソン歌手エディット・ピアフの自伝にもとづいた芝居であった。
2004年の2月に妻が病に倒れてから19年間、私は劇場では一本の演劇も一本の映画も見ていない。TVでも長時間拘束される映画も1時間のドラマも見ていない。妻の介護で精いっぱいで時間的余裕も精神的ゆとりもなかったからである。
昨日、隣の奥さんが上記の芝居を紹介してくれて会員になって観ないかと誘ってくれたのだ。妻が亡くなって余裕が出来たように見えたのでもう誘ってもいいだろうと思って誘ってくれたのである。
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ビラを見たら、最後に観たのは歌舞伎か映画か忘れてしまったけれど、不意に20年の空白を越えてあの空間が無性に懐かしくなり、「そうなんだ、もう芝居でも映画でも観ていいんだ」と気がついたのである。ただ、栗原小巻の名にはいささか驚いた。TVでも出ている記憶はなかったし、もう引退していたと思ったのである。思い出してみれば、私より3、4歳上ぐらいのはずであるから、頑張ればできない歳ではない。多少の不安を抱いて席に着く。
が、冒頭で歌い出した瞬間、危惧は消し飛ぶ。声の張り声量の大きさに驚く。この人は演劇人だと思っていて、歌手とは思っていなかっただけに驚きは大きかった。同時に自分より年上で一時間半の舞台を独演する体力と精神力に舌を巻く。50年前は若手の美人女優としか思っていなかった人が年を重ねて一流の舞台人となりシャンソンを歌うとは。
いつしか自分の人生に、栗原小巻の女優人生、エディット・ピアフの人生を重ねて観ている自分がいた。「愛の賛歌」を歌った時には胸が熱くなった。ピアフの最後は車椅子だった。妻の車椅子を重ねて観ていた。
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お芝居が終って。
今日のこの時間は私の宝物であった。
次の次の9月公演は加藤健一と佐藤B作の「サンシャインボーイズ」。加藤健一を観たのは今から40数年以上も昔に、新宿の紀伊国屋演劇ホールで「熱海殺人事件」を観て以来である。佐藤B作も舞台で観たのは作品は忘れたがその頃だったと思う。観る方も観られ方も時代の戦友である。今から楽しみにしている。