男の子であるが体重は聞いていなかった。動画では元気な声で泣いていた。今は超音波で順調と分り、性別もわかり、帝王切開で手術時間もわかっていても不安なものである。特に今年はコロナ禍でありはらはらどきどきさせられていたので婿さんから連絡を受けた時はほっと胸をなでおろし、すぐに妻の特養と母のグループホームに生まれたことを伝える。
本当にコロナには神経を削らされた。娘の場合は翻訳の最終のチェックも重なり大変だったと思う。
今でこそ千葉の気の毒な赤ちゃんの事件があって妊婦とその家族は優先接種できるようになったが、娘夫婦の場合は優先接種どころか、まだ医療従事者や儂ら高齢者が優先の頃で、妊婦には射ってもいいのかどうかわからない頃だったのだから本当に自宅で息をひそめている状態だったのである。
幸い娘夫婦は二人ともホームワークになったが、婿さんは週に一日は新宿まで出社しなければいけない。儂は毎日、東京の患者数をチェックしては、菅や小池のおばはんを罵倒し、呪い続けていた。心配が高じて分子マスクと言う一枚4000円以上するマスクを夫婦に2枚ずつ4枚送る。金のことなど言ってはおれん。
だが、末端の行政は援助の手を差し伸べてくれた。江戸川区では障害のある妊婦のためにヘルパーを派遣してくれた。食事や入浴や身の回りの手伝いをしてくれる。出産前から始まり1年くらい世話をしてくれるのかな。本当に助かる。婿さんもしっかり育休をとり1年休職する。
ワクチン接種は婿さんは8月23日に江戸川区の予約が取れて第一回は接種済み。娘の場合は妊婦の優先接種で退院前日に第一回の接種を受けることが決まっている。これは正直助かった。
しかしながら、コロナ禍の出産は大変だ。婿さんは赤ん坊に対面できたのは今日の小一時間だけ。娘は退院するまでの一週間は面会謝絶。差し入れも禁止だ。
こんな状態だから、儂も上京は諦めている。不要不急の上京は島根県でも控えるように言われている。
儂も娘夫婦も接種していると言っても、どこで赤ん坊にうつるかもわからない。
赤ん坊のコロナ患者は随分いる。自宅療養すればこうなることはわかっているのに。この国では我が身は自分で守らないといけないのだ。
すると、菅や小池も言う。「我が身を守るつもりで行動してください」と。それっておかしくないか。やるべきことをやらないでおいて。
孫よ。君はこんな時代に生まれたのだ。
娘が大学2年生の頃だったか儂に突然こんなことを言った。
「お父さん、私が一番なりたいものなんだかわかる。笑うかもしれないけれど、私が一番なりたいのはお母さんなの」
妻が倒れた後のことだったと思う。
娘は一番なりたかったお母さんになれた。そういうお母さんに育てられた子はきっと優しい子に育ってくれると信じている。
【追記】
「今日、ワクチンを打っちゃいましょう」と言われて、今日、第一回目のワクチンを接種したそうだ。
ありがたや。