□37℃以上発熱している□過去2週間以内に発熱があった□だるい□気持ち悪い、吐き気がある□過去1週間以内に嘔吐した□喉が痛い□下痢をしている□くしゃみ鼻水がある□目が赤い、または結膜炎がある□1ヶ月以内に始まった咳がある□1カ月以内に始まった匂いにくさがある□1カ月以内に始まった味の感じにくさがある□同居している人が発熱している□直近2週間、渡航歴のあるかたや感染者との濃厚接触がない方□直近2週間、県外への外出及び県外者と接触のない方
一つでも該当があると面会できない。
面会割り当て時間は3時。30℃を越える、今年一番暑い日。体温が心配だったが36.1℃でセーフ。
窓を開けた広い集会室で、車椅子で連れて来られた妻とソーシャルディスタンスで話をする。弱って身体は傾いたままろくに話も出来ないことを予想していたら、思ったより元気そうなので少し安堵する。儂が誰か分からなくて、〇〇先生だの従兄弟の〇〇兄ちゃんなんて呼ばれやしないかとひやひやしていたが、分かってくれたようなので、それだけでも来た甲斐があった気がする。だが、何か食べたいものを聞くとカレーライスと答える。他にはと聞いてもカレーライス。そして、「帰る」と言う。「飛行機を運転してくれ」と言う。
話題を変えて子供たちの話をしてやると喜ぶ。その時だけまともになった気がする。車椅子だと座っているのが辛くなる。首も右に曲がりっぱなしで見ているだけで辛そう。以前なら背後から首を起こして支えてやっていたのだが、今は身体に触ることも出来ない。腰を揉んでくれと言うがそれもできない。散髪はようやく出来るようになったが、マッサージはまだ入れないと言う。「転がしてくれ」と言う。座っているのが辛くなり、ベッドに移りたくなったのだ。今日、散髪したので余計に車椅子が辛いのだろうとのこと。15分はすぐ。来週は娘がスマホで面会するので、儂は再来週の面会になるだろう。

約10年間置いてあったベッドを返却する。帰郷して7年間は妻が使い、特養に入ってからは外泊の時だけ使っていたベッド。その後、弱った父が使い、死後は母が使っていた。その母もグループホームに入所したら、もう妻も戻って来ることはないだろうと思って返却したのだが、長い間、部屋を占領していたベッドがなくなると、〈戻って来るところがない妻の哀れさ〉が浮かび上がって来る。東京でも50人以上の感染者が出たと言う。こんな調子では制限付きの面会は当分続きそう。外泊どころではあるまい。「仕方ないのだ」と自分に言い聞かせる。
コロナの2波3波しだいでは、妹たちも当分出雲には来れないだろう。来たら他県人と濃厚接触した儂が制約を受けることになる。
ところで、寄付の話だが、結局給付金10万円全額寄付した。一部使った残りの7、8万を寄付するつもりだったがどうにも切りが悪いし、給付金は寄付すると言う意志を貫徹したかったので。NHKのニュースだったか、給付金の使途を調査したら、寄付した人の割合は2%だったらしい。
語録(23)
「ズボンを〈は〉〈か〉〈せ〉、早く〈は〉〈か〉〈せ〉、寝てる間に〈博士〉になっちゃった」
※こういうお茶目な言葉遊びをするのが妻らしい。頭がいいのだ。思わず笑って疲れを忘れる。
2007.8.3
「幸せだなあ、何もしないで、こんなご馳走食べて」
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「お父さんの小説の中には風が吹いているから、風の小説家と名付けよう」
※勿論、読んだわけではない。読めない。この頃、NHKの朝ドラで「風のはるか」を放映していたと思う。朝や昼の再放送をつけていたのでその影響かもしれない。
2007.8.4
「車にのせて」
「どこ行くの」
「川尻(熊本の実家のある場所)いくの。車に乗って寝るの。○○(息子)、○○(娘)、出かけるよと呼ぶの」
2007.8.5
「左足が痛い。スキーで折れたから」
「どの辺が痛い?」
「もものあたり」
「あとでマッサージしてあげるから」
「ありがとう」
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「ちょっと足見て、布団につれてって、足見て。あかりつけて、早く」
2007.8.6
「お父さんに戻ってて」
「なんで」
「別な人と話してるみたいだから」
「どうして?」
「なんだかつっけんどんだから」
※疲れていたのか。そんな印象を与えたことを反省。
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「お父さん、最近なかよくしないね。その方がいいんでしょ」
「なんで」
「きつそうだもの。バタンと寝て」
2007.8.14
「○○ちゃん(娘)の名前、何にするか考えているの」
「いいじゃない、今の名で」
「ちょっと変わった名をつけてやりたいの。あきてきたみたいだから」
2007.8.20
「あっ、お父さんがいた」
「そりゃいるよ」
「会社行かなかったの。よかったね。こんな時間に家にいてくれて」
「お父さん、お母さん(わしの母親)から何もらった」
「さあ」
「気位の高いとこ、もらったでしょ」
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「お父さんの顔、年取ったね。誕生日の顔してないよ。疲れた顔している」
※わしの誕生日は10月なのだが。
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(御飯の時)
「しあわせだな、私。こんなにしてもらって。こんなに幸せでいいのかしら」
2007.8.31
(夜の12時に)
「お父さん起こして。おぞうに作ったんだから起こして」
「夜の12時だよ」
「ううん、6時よ。みんなより早く起きてせっかく作ったんだから起こして。みんなで食べるのが夢なんだから」
「夜の12時だってば」
「12時は6時なの」
「洗濯物干して来るからね」
2007.9.8
「安心だからつかんどくと(チンコを)逃げられないようにね」
2007.9.12
「みかん2個ちょうだい。〈2個の礼〉を持ってみかんちょうだい」
※〈三顧の礼〉をもじっている。本当に脳に障害を負ったのかと思う瞬間。
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「○○○(?)をちょうだい。 」
「待ってよ、〈あっ〉という間にやるから」
「〈あっ〉」と、言う。
※この言葉の瞬発力がすごいと思う。この時のことは今も覚えている。
2007.9.13
(トイレ介助をしている時)
「げっぷが出るから早くして(オナラが出る)あっ、下からげっぷが出た」
2007.9.15
「お父さん、今日くっついて寝ていい」
「うん」
「ああ、よかった。あっちいけと言わないでよ」
2007.9.19
「お父さんが車椅子乗った夢よくみるの。どきっとするよ」
2007.9.26
「お父さん、どこかに顔を捨てて来たんじゃないの。昔はいい男だったのに」
(TVを見ていて、主人公が人を殺して戻って来た時にこんなことを言った)
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「私、お父さんが死んだら泣くよ。かけがえのない人だから……私、泣いたでしょ」
「俺、生きてるよ」
「何回か死んだでしょ。今の間、死んでたのって、何回かあったでしょ」
(夜、パット交換していて)
「さかな、買って来てくれた」
「うん」
「ありがとう、優しいね、お父さん」