先々週は儂のいつものガラス越しの15分面会。3日前に娘が東京からスマホを使ってリモート面会をした。これは出産後初めてのリモート面会。孫の顔は儂が届けた写真でしか見ていないので、職員さんが介助してくれるタブレットの画面で映像として見るのは初めて。娘の報告によると、
「〇〇くーん、〇〇くーん、かわいい」
と大はしゃぎしたそうだ。その時の光景が目に見えるようでこちらまで嬉しくなった。なぜなら儂の時の面会とは大違いだったから。儂の時は話は弾まず、声は聞こえず、何を言っているのか不明瞭で、もうこのまま妻は駄目になってゆくのかなあと気持ちが沈むのがいつものことだったのである。
ご機嫌の妻は「△△ちゃん、いいお母さんになってください」と言ったそうな。
そこで娘が「いいお母さんになるコツは何ですか」と聞いたら「いっぱい抱きしめてあげるのよ」と言ったそうな。
娘は続けて聞きました。「お母さんが子育てで大切にしていたことは何ですか?」
妻は即答したそうです。「子供の心になること」

儂の記憶が確かなら、子育ての時期に妻がそんなことを言った記憶はない。妻の子育ては単純明快で、
「子供はいっぱい遊んで、いっぱい本を読んでいればいいの」
と言って、いっぱい遊んで、図書館からいっぱい本を借りて来ていた。いっぱい遊んだ後は戦隊シリーズや怪獣やアニメも見て、ゲームもやったが、しめはいいつも本だった。大切なことはまず遊ぶことだった。
今思うと妻の単純明快な言葉の奥には常に子供の心を読み取り、子供になり切り、子供に寄り添って行こうと言う思いがあったのだ。その30年以上も昔のことを問われ、脳に重い障害を受けたのに短い一言に凝縮して即答したことに驚くとともに、人には計り知れない力が秘められているのではないかと励まされたような気になる。

それに比べたら先々週の儂の面会はひどいものだった。
「ウィスキーを飲みたい」と言うので、「ビールなら買って来た」と言うと、「ウィスキーでないと眠れない」と言われた。
後は、いつものように「東京堂薬局(八代の従姉の家)へ行きたい」とか、脈絡もなく「交通事故に気を付けて」と言う。
かろうじて「孫は誰に似ていると思う?」と聞いたら、娘の名をあげたぐらいのこと。あとは会話にならず。

でも、次の面会からは、娘の面会に勇気づけられたので、このところずっとありきたりの話ばかりしていたことを反省し、妻の能力に限界を設けず色々話しかけてみようと思っている。

語録(30)

2008.11.4

「明日、初めてお父さんのヘリコプターに乗れる。嬉しい。怖いけど、他に誰も乗る人いないから、あぐらかいてもいいんだよね」

2008.11.8

「台所がどうなったかも忘れた」

2008.11.9

「足が痛い(もんだら)気持ちいい。無茶したのかな。足が痛くて歩けない。肩貸してくれないと歩けないよ」
※拘縮して痛いことは全然理解できていない。これを言われるのも辛いことの一つ。

2008.11.12

「私、しあわせよ。もっと幸せになるの」

2008.11.14

(御飯の仕度の時「トイレ」と言う)

俺「大変な時なのに」と言うと、「迷惑がらないで」

2008.11.15

「これからお買い物に行く?」と、聞くと

「ううん」

「何で」

「きれいにしてないモン」

2008.11.25

「ぞうに作ってくれてありがとう」

「けんちん汁だよ」

「そう言わないでよ。ぞうにだと思って食べてるんだから」

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「ぞうにに油揚げが入ってるよ」

「けんちん汁だよ」
※漫才みたいなやりとりをしていたことが懐かしい。

2008.11.28

(夕ご飯食べながら)

「私なんか幸せ者だよ。今日なんか何もしなかった。掃除しかしなかった」

2008.12.6

「私が考えようとすると、お父さんは考えなくていい、考えなくていいと言うでしょ。ありがとう」

2008.12.7

(俺のことを)

「優しい目をしている。優しい人を選んだの。みんなに自慢するの」

2008.12.8

「ウンチ出た」

「(調べて)なんだ、出てないじゃん」

「驚かせてやったの」

2008.12.10

「私、〇〇(息子)のパイロットの制服姿を見たいよ。そして、第一号のお客になるの」

2008.12.15

車椅子からベッドへ抱いて移す時

「ああ最高に幸せ、一番幸せの時」

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(いやなことをしたら)

「お先に天国へどうぞ、今日にでもどうぞ、一応かたちだけでも後追いしますから」

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(マッサージをしたら)

「うわあ、気持ちいい。こりゃ、まいったな」

2008.12.31

「川尻(熊本の実家)行くよ。朝ご飯食べに行くの。みんな、降りておいで。川尻、行くよ」

2Fへ叫んで、返事がないので)

「さよなら、先へ行くよ」